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News & Blog東京探訪1日目_神楽坂編|隈研吾の建築を続けて見て、古道具の「眼」に触れる
10月1日から3日まで、東京へ建物探訪に行ってきました。
今回の目的は、設計中のお客様の家のための素材探しと、空間の勉強です。
写真やネットで見るのと、実際にその場所に立つのとでは、まったく違います。
天井の高さ、素材の手触り、歩いたときの距離感。
空間は、体で触れて初めて分かることがたくさんあります。
1日目は、神楽坂から渋谷へ。
まずは神楽坂編です。

朝7時11分、新山口から「のぞみ4号」で出発。
11時33分、東京駅に到着です。
la kagu|階段は外構ではなく、建物の一部

最初に向かったのは、神楽坂駅を出てすぐの「la kagu(ラカグ)」。
1960年代に建てられた新潮社の倉庫を、隈研吾さんの事務所がリノベーションし、2014年にオープンした商業施設です。
現在は1階にAKOMEYA TOKYOが入っています。
波板の外壁は、倉庫だった頃の姿をそのまま残しています。
そして、この建物で一番印象に残ったのが、正面の大階段。

よく見ると、木を挟んで片側は普通の上り階段。
ところが、メインストリートに近い側は、大きな波のような形をしています。
段の一つひとつが広く、上るための階段というより、座ったり、待ち合わせをしたりする場所になっています。

この階段は、建物の前に付け足した外構ではありません。
街と建物のあいだをつなぐ、いわば建物の一部です。
住宅で言えば、縁側に近いのかもしれません。
外でもなく、中でもない。その中間の場所があることで、建物がぐっと街に開かれて見えます。
赤城神社|同じ建築家の建物を、続けて見る

la kaguから歩いてすぐの場所にあるのが、赤城神社です。
2010年の「赤城神社再生プロジェクト」で、隈研吾さんが社殿のデザインを手がけました。
2013年にはグッドデザイン賞も受賞しています。
la kaguを見た直後に、同じ建築家の建物を見る。
こうすると、その建築家がどんな考えで建物をつくっているのかが、少しずつ見えてきます。

境内に入ってまず驚くのが、神社のすぐ隣に建つ集合住宅。
実はこの集合住宅も、神社と一緒に計画されたもので、隈研吾さんがデザイン監修をしています。
外壁には、細い縦のルーバーが、幅や間隔を少しずつ変えながら並んでいます。
神社の隣にマンション、と聞くと違和感がありそうですが、実際に立ってみると不思議となじんでいる。

その理由は、社殿を見ると分かります。
社殿は、木の柱と梁にガラスを組み合わせたつくり。
すだれや木の格子がつくる「縦のライン」が、隣の集合住宅のルーバーと響き合っています。
la kaguは、古い倉庫を残して、階段で街とつなぐ。
赤城神社は、神社と住宅を、縦のラインでつなぐ。
どちらも、建物を目立たせるより、周りとの境目をやわらかくすることを大事にしている。
隈研吾さんには『負ける建築』という著書があります。
2つの建物を続けて見て、その言葉の意味が少し分かった気がしました。
soko|古いものの良さを見抜く眼

次に向かったのは、「soko」。
こちらも新潮社の旧倉庫で、かつては約500万冊の本が保管されていた5階建ての建物です。
2025年には、産業遺産として国の登録有形文化財になりました。
建築家・中村好文さんの監修で改修され、2階と3階に7つのギャラリーが入っています。

今回のお目当ては、3階の「坂田室」。
ちょうど、古道具坂田の店主だった坂田和實さんの展示「坂田和實の眼|見るための布」が開かれていました。
型枠の跡が残るコンクリートに、塗装のはがれた古い木の引戸。
荒々しい空間だからこそ、布の色や質感がいっそう際立ちます。

坂田さんは、1973年に東京・目白で古道具の店を開き、ヨーロッパやアフリカ、南米など、世界中からさまざまな物を集めてきた方です。
使い古した雑巾や板きれのように、誰も気に留めなかった物に美しさを見出す「眼」を持った目利きでした。
古道具は、建築で言えば、新築ではなく中古住宅のようなもの。
新しくて良いものを選ぶのは、それほど難しくありません。
でも、古いものの中から本当に良いものを見抜くとなると、一気に難しくなります。
坂田さんは自分の物の見方を「ひとりよがりのものさし」と呼んでいました。
ところが、そのものさしは、多くの人が信頼する基準になっていった。
主観を突き詰めると、それがやがて客観になる。
中古住宅のリノベーションでも、築年数や性能の数字だけでなく、何を残して何を活かすかを見抜く眼が問われます。
展示室の中は撮影不可だったので写真はありませんが、ひとつひとつ時間をかけて見て回りました。
ちなみに中村好文さんは、坂田さんの美術館「as it is」を設計した建築家でもあります。
展示は11月8日までの週末も開かれているそうです。
神楽坂の街を歩く

ここからは、神楽坂の街を歩きます。
石畳の細い路地が続く「かくれんぼ横丁」では、黒塀に料亭の暖簾。
「これぞ和」という、王道の組み合わせです。

そして、街並みを見ながら歩いているときに、思わず足が止まったのがこの入口。
竹を曲げて並べ、扉のまわりをやわらかく包み込んでいます。
竹という昔からある素材でも、使い方次第で、ここまで新しい表情になる。
目的地だけを回っていたら、出会えなかった景色です。
街を歩くと、こういう発見もある。
神楽坂 茶寮 本店|キナリと木と、お茶の緑

お昼は「神楽坂 茶寮 本店」へ。
この空間を見てみたくて、立ち寄りました。
白い塗り壁に黒い枠、生成りの暖簾、足元は石張りのアプローチ。
かくれんぼ横丁の「黒塀に暖簾」と比べると、同じ暖簾でもずいぶん軽やかな印象です。

店内は、キナリ色の塗り壁に、木の床と椅子。
椅子の座面には、お茶を思わせる緑が使われています。
窓の外には竹の坪庭、天井からは丸いガラスのペンダント。
キナリと木だけだと、やさしいけれど少しぼんやりしがちです。
そこに緑がひとつ入ることで、空間がきゅっと締まって見えました。
ベースの色を決めて、差し色をひとつだけ入れる。
住宅の色計画でも、そのまま使える考え方です。
午後は渋谷へ
同じ建築家の建物を続けて見て、古いものを見抜く眼に触れて、街を歩いて素材を見つける。
神楽坂だけで、かなり濃い時間になりました。
午後は渋谷へ移動します。続きは渋谷編で。
