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News & Blog湯布院「すみか」へ
旅館ライクな家をつくるために、
先日、湯布院にある旅館 「すみか」 に行ってきました。
家づくりを考えるとき、
お客様がどんな空間を理想としているのかを想像しながら、
実際にその空間を体験しに行くことがあります。
東京ではホテルライクな空間を体験したり、
有名建築家の美術館を見に行ったり。
そうした体験の積み重ねが、
今の私の家づくりのルーツになっています。
今回訪れた「すみか」も、
旅館ライクな住まいを考える上で、
一度体験しておきたい場所でした。

落ち着いた木の外観と石積みの塀。
派手さはありませんが、
周囲の自然と調和する静かな佇まいです。
建物だけを強く見せるのではなく、
敷地の木々や周辺の景色も含めて、
全体で旅館の空気感をつくっているように感じました。

入口のアプローチも印象的でした。
曲線の壁と大きな庇によって、
外から直接内部が見えないようになっており、
自然と玄関へ導かれていく構成です。
旅館らしい
**「すぐに見せすぎない入口」**がつくられていました。
ここでも植栽の配置が効いていて、
建物へまっすぐ入っていくというより、
緑の間を抜けながら少し気持ちを整えて入っていく感覚があります。
この“ワンクッション”があるだけで、
外の世界から内の世界へ切り替わる感じがあり、
旅館らしい落ち着きにつながっていました。

植栽もとても良かったです。
華やかに見せるための植え方ではなく、
あくまで建物や塀、アプローチの雰囲気を支えるような配置でした。
木塀や外壁、庇のシャープなラインに対して、
枝ぶりや葉のやわらかさが加わることで、
空間に緊張感だけでない、
やさしさや余白が生まれていました。
旅館ライクな空間は、
建物だけで成立するものではなく、
こうした植栽の存在もかなり大きいと改めて感じました。

ロビーに入ると、
木の柱や梁が印象的な空間が広がります。
構造の木をそのまま見せた空間で、
素材の温もりがとても心地よく、
落ち着いた雰囲気です。
奥にはグランドピアノもあり、
夜にはここで演奏が行われていました。

夕食の時間には、
女将さんがグランドピアノを演奏してくださり、
その音色を聞きながら食事を楽しむことができます。
静かな空間にピアノの音が響く時間は、
とても贅沢な体験でした。
客室の空間

部屋に入った瞬間の印象がとても良かったです。
ドアを開けると
セミダブルのベッドが2つ並び、
その背面には板張りのアクセントウォール。
L型のカウンターと間接照明があり、
この壁面が空間の印象を大きくつくっています。

部屋の奥には、
椅子が2つ並んだ小さな休憩スペース。
このスペースがとても良く、
大きすぎず、小さすぎず、
ちょうど良いサイズです。
窓は
正面+折り返しのL型窓
大きな開放感がありますが、
床までの掃き出し窓ではなく、
腰窓になっているため落ち着いた印象になっています。
そして窓の外には植栽があり、
ただ視界が抜けるだけではなく、
近い距離に緑があることで視線がやわらかく受け止められていました。
遠くまで見せる開放感というより、
まず手前の緑を感じながら落ち着く。
この距離感も、とても旅館らしいと思いました。
なぜこの空間が落ち着くのか
実際に体験してみて、
この部屋がなぜ心地よいのかを考えてみました。
まず天井高は
約2300mm
通常より少し低めです。
建具が2mなので
上に30cmほどしか余白がなく、
スタイリッシュというより
落ち着いた印象の空間になります。
さらに大開口の窓も、
天井いっぱいにはせず、
上部に壁を残しています。
これも落ち着きをつくる要素だと感じました。
色構成もシンプルです。
・木
・白
・ベージュ
アクセントカラーはなく、
素材の色で空間が構成されています。
床は
畳とフローリングが半分ずつ。
フローリングとカウンター、
建具の色を同系のナチュラル色で統一し、
畳も生成色に近い色で揃えています。
つまり空間は
2色で構成しながら、
畳によって濃淡をつくる。
家具も木で統一されているため、
全体にまとまりがあり、
とても落ち着いた空間になっています。
そこに外の植栽が加わることで、
木・白・ベージュの静かな空間に、
自然のやわらかさが入ってくる。
建物の中と外がケンカせず、
同じトーンでつながっていることも、
好印象につながっているように感じました。
露天風呂

この旅館のもう一つの魅力が
客室露天風呂です。
自然石でつくられた露天風呂で、
静かな空間の中でゆっくりお湯につかることができます。
露天風呂まわりも、
木の外壁や自然素材、外の気配がちょうどよく重なっていて、
派手ではないのに、しっかり特別感がありました。
やはり旅館は
露天風呂付きの客室があると
時間の過ごし方が大きく変わると感じました。

朝食もとても美味しく、
丁寧に作られた和朝食でした。
旅館の朝ごはんは、
ゆっくりした時間を感じられて良いですね。
朝のやわらかい光や、
窓の外の落ち着いた景色も相まって、
空間全体がとても穏やかに感じられました。
私の中の「旅館ライク」

今回の滞在で感じたのは、
旅館ライクな空間というのは、
・天井を高くすること
・大きな窓をつくること
だけではなく、
落ち着くスケール感
素材の統一感
空間の余白
建物と植栽の関係
こうした要素の積み重ねで
つくられているということでした。
木の温もりを感じながら、
ゆっくり過ごせる空間。
そこに外の緑や庭の気配が重なることで、
さらに深い落ち着きが生まれていく。
今回の体験も、
これからの家づくりの中で
「旅館ライクな住まい」を考える
大きなヒントになりそうです。
